今日の文字実験

今日思い立って、ちょっとした実験をしてみた、といっても本人以外分かり辛いものだが取り敢えず晒してみる。

同じ文句(「筆仕い肝要たる事」)を3回書いてみたが、やはり見た目ではあんまり分からないなぁ。


ということで解説。
一番上はBrauseの1 1/2mm、真ん中はMitchelの2 1/2、一番下はSpeed BallのC-4で書いたもの。
何をしたかったかというと、書き味をもう一度試してみたかったのである。このところずっとBrauseばかりを使っていたのだけれど、つい昨日書いた時、連綿した雰囲気で書きたいと感じ、その時にBrauseではちょっと固いかな、と感じたので(一般的にはBrauseは固く、Mitchelは柔らかく、Speed Ballは中庸という評価)。


で、3種類書いてみての感想・感触。

Brause

書き慣れていることもあって、自分の筆圧に耐えうる強さがあるので思い通りに書ける。心持ち固いゴシックっぽい角張った文字になる、またはそう書きたくなる。

Mitchel

購入した当時は柔らかすぎて全くもって書けないと評価して放っていたが、今は連綿した雰囲気で書きたいと思っていることもあって、意外にリズム良く文字の強弱を意識しながら書けたのに驚いた。かなり柔らかいニブなので注意しないと自分の筆圧に負けるので、書いている時の雰囲気は毛筆の感覚で、ベチャっとならないように優しくかつリズミカルに連綿と。心持ち角の取れた丸みを帯びた文字になる。Brauseよりも連綿しやすいが文字は太り気味になる。

Speed Ball

カリグラ始めた時最初に使ったニブだけど、めっさ書きにくくてちょっと吃驚。Brause・Mitchelはニブの長さがSpeed Ball比べて短くてこれに慣れてしまったからか。とにかくペン先が手の動きについていかないもどかしさ。それから、Brause・Mitchelからは反応が一々還ってきてそれが楽しいけれど、Speed Ballは全く反応がなくてつまらない。う〜ん、しばらく使ってなかったからか? いやMitchelも同じくらい久々だから、やっぱつまらないのか? 上記写真をご覧頂いて、一番下の文字は何かペン先に四苦八苦しているのが垣間見えますでしょうか?


ペン先一つでこの違い。紙とインク変えたらどうなるのか、むむむ。研究の余地多分にあり。
(以上は個人的見解であって、人によりペン先の好みは異なりますので、あくまで参考程度にお願い致します)


2011-7-27 12:00追記
@andscript 師匠よりご教示:「ペン先の斜め切れてる角度にもよるのかも。ブラウゼは一番斜めで、次がスピードボール、ミチェッルは平ら。」うむ、だからMitchelだと時々紙をガリガリ削ってまうのかorz
@letter_arts 師匠よりご教示:「書く文字や線の種類によってもペンニブの合う/合わないはあるかもです。」うむ、Brause・Mitchelで連綿を模索していこう。Speed Ballは、ゆっくり確実に書く、Roman CapitalやFoundational書くときが良いかも(あくまで自分が書く場合です)。

今日の文字

今日は朝から文字を書こうと思い立ったが、よく考えたら1ヶ月以上文字書くどころかペンさえ握ってなかった。まあ、紙版つくるためにちょこっと「moji」とは書いたけども。レッスンの方も諸事情で行けてなかったというのもあって。
あと、しばらく手で何かを作って無かったので欲求不満気味だったので。


『入木抄』の書籍を入手して一応全文が参照できるようになった訳だけど、前と変わらず『入木抄』から、「筆仕い肝要たる事」を書いてみた。今回は、Bastard Secretaryは半分cursiveということもあって、変に文字の形に捉われると文字毎に独立して単語のまとまりや語句のまとまりが無くなる気がしたので、筆勢、つまりはペン先の向かうまま、文字と文字が連綿していくような心持ちで書いてみた。



前半。久々で、初端から「f」の足の書き方を間違えるorz



後半


…写真汚くて申し訳ない。巧く撮れないorz それと文章も最後に擦ってしまって汚れたorz
改行もヘン。もうちょっと考えないと。参考にしたテキストには振仮名がないので、古文の素養の無いワタクシとしては、読みが合っているのか甚だ不安。あと、もっと大きな紙に書かないといけないな、と反省材料ばかり。

組版ステッキのおはなし―第3回Double KneeとAlbion

今回は、ちょっと変わった「Double Knee」タイプと、後にKneeの形状がスタンダードの1つになる「Albion」タイプについて。
This time, I introduce a oddish composing stick “Double Knee”, and the “Albion” that become one of the standard knee form later.

Double Knee Composing Stick

Franklin’s composing stick. (P... Digital ID: 117413. New York Public Library
Franklin’s composing stick. (P... Digital ID: 117413. New York Public Library


異なる字詰(行長)で本文および傍注をお互い独立して組めるように、2つのKneeを持つステッキ。資料の限りでは、少なくとも1683年までには使われていた。上記の写真は、18世紀にBenjamin Franklin*1が使用していたとされるステッキの1つでDouble Kneeである。下記サイトによると、鉄と木で出来ており、サイズは長さ8 1/4 inch (21.0cm)、幅2 inch (5.1cm)、高さ5/8 inch (1.5cm)。
“Double Knee” had two knees that were able to typeset texts and marginal notes independently of each other. According to documents, the stick was used by 1683 at the latest. The photo above is one of the composing sticks that Benjamin Franklin is believed to have use in 18th century, it is “Double Knee”. According to the website below, it is made of iron and wood, length is 8 1/4 inch (21.0cm), width is 2 inch (5.1cm), height is 5/8 inch (1.5cm).


Benjamin Franklin使用のDouble Kneeの別写真。こちらの方がKneeが2つあることがわかる。
The other photo of “Double Knee” used by Benjamin Franklin. You can see that the stick in the photo has two knees.


少なくとも1683年までには使われていたことを記している資料
The document describing “Double Knee” used by 1683 at the latest.

Albion


Albion stick (PHOTO by Speckter, Martin k. Disquisition on the Composing Stick. The Typophiles, Inc. 1971, 128p. (p.70))


ステッキに活字をセットしていくと、Kneeは先端にいくほど広がることがあり、それを防ぐための筋交いを取り付けたものが考案され、広く他メーカーも採用した。考案年代、その他詳細は不明。
Because the knee was spread toward the edge when the stick was filled up with set type, “Albion” with a diagonal brace strutting the knee was invented. This was adopted by many manufacturers. The date of invention and other details was unknown.

参考文献 References

  1. Williams, Fred. The Lore of the Composing Stick. 1987
  2. Lasting Impressions: Sumac and Willow
  3. Composing stick - The Benjamin Franklin Tercentenary
  4. NYPL Digital Gallery | Detail ID 117413
  5. Speckter, Martin k. Disquisition on the Composing Stick. The Typophiles, Inc. 1971, 128p.

*1:雷に向かって凧を上げて、雷が電気であることを明らかにし、100ドル紙幣に描かれているあの人。元は印刷業に携わっていた。

組版ステッキのおはなし―第2回Common Screw Stick


Common Screw Stick (PHOTO by gillographic: original is on Flickr)


アメリカ・ヨーロッパを問わず、一番古いステッキの形式の一つ。最初は木製、途中一部の部品を金属で補強し、後に全てを鉄または鋼などで製造するようになる。Kneeを固定するのに色々な方法が考案されたが、その一つはRailまたはKneeに、Knee固定用のネジを通すための穴もしくは溝を作ることだった。Railには1インチ間隔に丸穴が開けられるか、Railとほぼ同等の長さの溝が開けられた。Kneeの内、Railに接触する部分には、これにも溝が開けられた。RailとKneeにこのような穴や溝を開けることにより、あらゆる細かい寸法に対応できるようになっており、シンプルな形式のため非常に実用的で融通の利く製品でもあって数多くのメーカーが製造した。また、このステッキでは通常、Bedに目盛りは刻まれなかった。

This is one of the oldest type sticks. The first stick was made of wood, later some parts of it were covered with metal, and eventually all of it was produced of iron, steel or other metal. Various methods were devised to fix the knee. One of those was that the rail or the knee had holes or a groove to be passed through by the screw for fastning the knee. The rail was pierced by holes at one inch apart from each other or slotted its nearly full length. The part of the knee that rested against the rail had a groove, too. Because of opening thus holes or a groove to the rail or knee, this stick was able to adjust to any measure. Although usually ungraduated and simple, it was very functional and versatile, and was manufactured by many companies.


Common Screw Stickの他の写真は以下のリンクからどうぞ(Links to the Flickr
Links below to the other Common Screw Stick photos in the Flickr.


以下は、Flickrにて見つけたステッキの写真へのリンク。
Links below to the composing stick photos in the Flickr.

純木製のステッキ Wooden composing stick

参考文献 References

  1. Williams, Fred. The Lore of the Composing Stick. 1987
  2. Ringwalt, John Luther. American encyclopaedia of printing. Menamin & Ringwalt, 1871, 512p. (p.116)
  3. Tim's Book & Miscellaneous Blog: Common Screw Stick【実製品の写真が見られる】
  4. Tim's Book & Miscellaneous Blog: Improved Standard Job Stick【チラシ画像の右下にイラストと価格表あり】
  5. 7. Benjamin Franklin (1706-1790). Composing stick. RBML, Typographic Realia | Jewels in Her Crown: Treasures of Columbia University Libraries【Benjamin Franklin*1がフランスで購入・使用していたという18世紀のCommon Screw Stickの画像】
  6. The Harper Establishment; or, How the Story Books are Made, by Jacob Abbott (1855)【p.56に当たる箇所にComposing Stickのイラスト(1855年当時)が掲載されているが、その形式はCommon Screw】

*1:雷に向かって凧を上げて、雷が電気であることを明らかにし、100ドル紙幣に描かれているあの人。元は印刷業に携わっていた。

組版ステッキのおはなし―第1回序論:成り立ちと部品名と寸法など

はじめに Preface

ひょんなことから今週になって、組版ステッキについて調べ始めたら色々と興味深い資料が出てきてすっかり嵌ってしまった。といってもほとんどがアメリカの資料ばかりで特許情報を含めてそれなりに集まったけども、ヨーロッパや日本のものはほとんど集まっていない。取り敢えず今回は序論として、組版ステッキの成り立ちとそれの部位名称について本当にザックリしたお話を。
When I just started doing a search on the Internet for the COMPOSING STICK this week, I caught a lot of its curious data and became engrossed. But, I only gathered the materials about it which was made in America, including a volume of patent information, I was never able to get documents on it made in Europe and Japan. This time, as a overview, I give an outline of the history, the part names, and general sizes about it.

成り立ち Timeline

活版印刷の揺籃期、まだ組版ステッキ(Composing Stick)は使われていないどころか発明さえされておらず、活字を直接木製のチェース(Chase)に組み込んでいたことが、当時の印刷物から推測されている。その後、植字工(Compositor、略称Comp)たちの改良の結果、木製のステッキが登場する。この時、木の枝(Stick)から削り出されたのがその名の由来である。このステッキは決まった字詰(行長)しか組めないものだったが、後に字詰(行長)を変えられるものへと改良された。また、組版の精度とステッキの強度を増すために、一部の部品を金属(真鍮など)で造るようにようになる。17世紀*1には全てが金属製のステッキが使われるようになる。材質は真鍮・砲金・鉄・鋼で、ニッケルでメッキされたりもした。ただ、木製のステッキは、木活字の植字用に20世紀初頭まで使われ続ける。
In the beginning of letterpress printing, the composing stick was not even invented. From the then printings, it is estimated that compositors set the type directly in wooden chases. After the improvements by compositors, the first wooden sticks were cut from sticks of wood, and this is the origin of the name ‘stick’. This stick was set only one line length, later was improved to be able to change line lengths. And, some parts of the stick were made of metal to make them more precise typesetting and to increase in strength of them. In the 17th century the first metal sticks were made and used. They were made of brass, gunmetal, iron or steel, and some of them were plated with nickel, too. Wood sticks were used continuously for setting mainly the Wood Type until the early part of the 20th century.

ステッキの一般的な部品名と寸法 General names and sizes of the composing stick

以下に挙げるものはステッキの一般的な部品名と寸法を図示したもの。
初期のステッキはネジで留めていたが、アメリカでは19世紀中頃にクランプ(clamp)で留める方法が特許を取得してからはクランプ式が一般的になった。それに伴い、留め穴も丸穴から長方形へと変更になった。(ヨーロッパや日本はまた別のお話)
This is the illustration of general names and sizes of the composing stick. It was one of the common model of stick (called Common Screw Stick) until inventing the ‘Grover’ type stick in the US of the mid 19th.


次回以降の予定 Next

主にアメリカにおける、19世紀中頃以降に登場した様々な種類のステッキを一つずつ、乃至何個かまとめて紹介していく予定。
ヨーロッパや日本のステッキ情報を追いかけつつ。

参考文献 References

  1. Williams, Fred. The Lore of the Composing Stick. 1987
  2. The Inland Printer Company. The Inland Printer–A Technical Journal: Devoted To The Art Of Printing. Volume VII, Maclean-Hunter Pub. Co., 1890, 1160p. (p.172)
  3. Ringwalt, John Luther. American encyclopaedia of printing. Menamin & Ringwalt, 1871, 512p. (p.116)

*1:別の資料(より古い資料の参考文献3のこと)では1796年12月に、フランスはリヨンの植字工Hubert Reyが最初の金属製(鉄)のステッキを発明した、とある。

今日の文字、または紙と手作業で活版試行

先日作業した中で、切り取った文字を版として印刷できる(コラグラフ(collagraph)という手法)ことを書きながらやらずじまいだったので、今回は新たに手書き文字で試してみた。結果は果して!?


まずは手書きから。今回は「moji」を薄めの紙に、ヘアラインを太めにして(切り取る時大変なので)。


書き終わったら、文字を囲むように切り取り、厚めの紙(0.6mmくらい)に糊でしっかりと貼付ける。


糊が乾いたら、文字を切り取る。只只集中。


切り取り完了。


切り取った文字を裏返しにして、厚めの台紙に貼る。


糊が乾いたら余白を出来る限り切り取る。余計なインクが付いて印刷時に汚さないようにするため。

(既に若干インクが付いているのは、どういう風になるか一度試してみた故)


そうして、木または金属のブロックに版を付け、インクを表面にたっぷり付けいざ勝負。















あれ、うまくインクがのらない。
刷られた紙をじぃ〜〜〜っと観察。
文字のエッジにはインクがのって中程はインクが紙に移らない。
これはエッジが立っているからと推測して版を触ってみると、やはりそうだった。


切り取った後は、エッジの立ちを鞣さないといけないということが今回の収穫。
次回はもう少しマシになるように。
あとスタンプ台はあった方がいいな。インク塗るのは意外と大変(えっ 苦笑

アメリカにおけるWood Typeの歴史の概要

今ごく狭い範囲でWood Typeが熱い。
アメリカのWood Typeについて、ざっくりと概要を調べてみた。
今回は、重要な役割を演じた人物についてごく簡単な紹介をば。

はじめに

木活字自体は、中国を始めアジアやヨーロッパで広く行われていたが、現在のようなWood Typeは、アメリカにおいて、19世紀初頭からの商業印刷の発展に伴う大判の広告物の需要に応えるべくして登場した。大判の広告物は大きな活字を必要としたが、金属活字では重くて扱いにくくまたコスト的にも合わない。その点Wood Typeならば金属に比べて軽くまた安価に入手可能であった。
Wood Typeで使用する木は、リンゴ(apple)、ツゲ(boxwood)、サクラ(cherry)、モチノキ(ヒイラギ、西洋柊、holly)、マホガニー(mahogany)、カエデ(モミジ、maple)、マツ(pine)、ハナミズキ(dogwood)がある。

ダリアス・ウェルズ(ダライアス・ウェルズ、Darius Wells)

1827年に活字の大量生産方法を発明。1828年には、知られる限り最初のWood Typeカタログを発行する。
それまでのWood Typeの製造方法は、木に直接文字を書くか木に紙を貼付けてその上に書くかして、文字以外の箇所をナイフか彫刻刀で削り取るものだった。
そこにウェルズは今後の標準となる「lateral router」という新しい工具を導入した。それはWood Typeを大量生産するには必要不可欠なものだった。またこの工具は1834年にウィリアム・レヴェンワース(William Leavenworth)による写図機(pantograph)と組み合わせて使われるようになる。
最初のWood Typeカタログの前書きでウェルズは、金属活字の半分のコストで済み、また活字表面は機械製造のため平滑である、鉛で大きな活字を造る場合冷却が一様にし辛いため歪みやすい、とWood Typeの優位性をアピールしている。

ウィリアム・レヴェンワース(William Leavenworth)

1834年に写図機(pantograph)を導入し、またウェルズのrouterと組み合わさることで、Wood Typeの製造工程に多大なる貢献をなすことになる。


lateral routerと写図機(pantograph)の組み合わせ

エドワード・ハミルトン(Edward J. Hamilton)

1880年にモチノキ(ヒイラギ、西洋柊、holly)でWood Typeの製造を始める。モチノキはカエデ(モミジ、maple)に比べて半額でかつ1/16インチの薄さにまで切ることができてより安価なマツ(pine)に貼付けることができたので使われるようになった。
1868年にTwo Riversにやってきて、後に椅子の工場に勤め出した。
ある時ライマン・ナッシュ(Lyman Nash)という編集者から急な依頼を受け、急遽自宅裏のポーチ(mothers back porch)で足踏式のスクロール・ソー(scroll saw)を駆使してWood Typeを造り上げた。それは評判がよく、その後工場を辞めてJ. E. Hamilton Hollywood Type Companyを立ち上げることになる。