《webで見られる定義》ー字体の諸定義についてーその5


目次

  1. 分野別でみた字体の定義
    1. 各種辞書における定義
    2. 学術的分野における定義
    3. 書道における定義
    4. 政策的分野における定義
      1. 国語行政における定義
      2. 工業規格における定義
    5. 印刷関連分野における定義
    6. webで見られる定義
  2. 「字体」という語の歴史的経緯
  3. 諸外国語(主に英語)における、「字体」に類する語について

webで見られる定義

  • その字がそのとうりに読める文字の骨組み。

千都フォント|用語解説・タイポグラフィの世界 書体編小宮山博史 著 大日本スクリーン製造 2005
四角のなかに押し込めること 築地活版の仮名書体小宮山博史 著 大日本スクリーン製造 2005 PDF版 p.21 註15(PDF)

  • 集団が決めたある共通の特徴をもつた字の集り。
    • 戰後に「新字体」とか「簡体字」といふ漢字が公布されたが、国家なり、ある集団なりが約束を決め、ある方式によつて書き直した字であるので、このやうな字群を「字体」と呼ぶのが妥当なのではないだらうか。

漢字にかかはる用語の定義について (二)字体」谷田貝常夫 『文字鏡研究会会報 第四号』文字鏡研究会 2001/08

  • 難しくいえば個々の文字を識別する、要素としての点画の組み合わせ方をいう。簡単にいえば、例えば指で空中に文字を書いたような、抽象的なもののことだ。

「プロジェクトFONT1000」〈基礎講座〉[第1回]字体と字形の違い』 味岡伸太郎 著 MdN 2001

  • 文字としての字画のあり方、つまり文字の骨格にあたるもので「略字体」「正字体」「旧字体」などが存在している。

DTP玉手箱 文字の特性とフォント--フォントデザインの実際(1)』澤田善彦 著 print-better website(社団法人日本印刷技術協会 運営) 2000/01/24

  • ある書体のなかで異なる字形を持つグループをその書体の中での字体とする。

今昔文字鏡 文字分類 字体・字形・書体・意匠体の定義』Ver1.0 エーアイネット 1997 

  • 「ちゃんとした字を書け」と言われた際に思い浮かべ、書きつけようとする文字の姿ーあるいは意図する文字であることを他の文字と誤認されないように示すにはどのように点画を配置すべきかという設計図のようなものーのこと。(略)字体は「あそび」を許容する概念です。

公有フォントを作る ■文字の字体と字形』 内田明 著 Linux Japan 2002年2月号 p.38(PDF)

  • デザイン的な要素を含まない、文字として認識できる最低限の文字の骨格。字画のありかたである文字の形を意味する。図のように、「学」と「學」は、同じ漢字でも字体が異なる。これに対して「書体」は、表示上の効果や美的感覚を含めたもの。
  • 字体は、正字体・俗字体・新字体(略字)の別だけでなく、楷書・草書・行書の別、活字の明朝・ゴシックの別などについてもいうので、「書体」と明確に区別されないまま使われることもある。

図解DTP用語辞典 【字体】

  • あくまで文字表記のための規範であって、文字そのものではない。
  • 多箇所での定義:集団の約束による、字の全体的形式。
  • 一定の種類に属しているという普遍的な面
  • 「一定の種類に属しているという普遍的な面」というのが、直接に目で見、手で触れることのできるような実体的な存在ではないということである。それは観念的な存在であり、文字を表記するうえでの社会的な約束事=規範にほかならない。したがって<字体>とは、それ自体が単独に目に見えるような形で存在することはできず、「感性的なかたち」との統一によって、初めて具体的な存在となるものである。図式的にいえば<字体>(規範)+<様式>(感性的なかたち)=文字(書体)ということになろう。

文字認識の方法』佐藤章 著


以上から共通項として、「字体」の定義に関して以下の重要な語彙が見いだされる。


「字体」とは『抽象的な概念/観念』である、ということと、以下の4つのグループへの分類である。

  1. 骨組み・骨格
  2. 弁別指標
  3. 点画の組み合わせ
  4. 社会共通の基準


しかし、以上の「重要な語彙」の内の『社会共通の基準』に類似するが、それに収まりきれないと感じているものがある。それが、今回最後に引用した

  • あくまで文字表記のための規範であって、文字そのものではない。

である。


ここから自分の「字体」についての考えが敷衍されていくことになり、それについて概略的なものを先に記したのである。