今週読了

教科書体変遷史

教科書体変遷史

題名通り、教科書体活字の歴史を明治から現代に至るまでまとめたもので、特に著者は教科書制作・出版に直接関わっていたため、その当時の現場の雰囲気が伝わってくるために、教科書体という活字がどのような紆余曲折をもって成立してきたのかがよくわかる。
個人的に、この著作の中で特に気になったのは、戦前までの「楷書体」「教科書体」系列の『耳』の5画目は6画目から突き出ないのが主流だったのが戦後は突き出るような字形に『なぜか』なったという点。これの謎解きがなされたなら非常にありがたかったのだが(「当用漢字」の字体の成立と同じく、戦後のどさくさに決定されたものだから、当時の資料など残っているのかどうか…)。
一つ難点を挙げるとするなら、図版が多くかつ大きく掲載されていてそれはそれで資料としては大変あり難いのだが、そのためかどうか、読みにくく、まとまりがないように感じられたのは残念。