《政策的分野における定義》ー字体の諸定義についてーその3


目次

  1. 分野別でみた字体の定義
    1. 各種辞書における定義
    2. 学術的分野における定義
    3. 書道における定義
    4. 政策的分野における定義
      1. 国語行政における定義
      2. 工業規格における定義
    5. 印刷関連分野における定義
    6. webで見られる定義
  2. 「字体」という語の歴史的経緯
  3. 諸外国語(主に英語)における、「字体」に類する語について


順序としては今回は『3.書道における定義』となるのだが、まだ資料不足で調べ切れていないので次に行く。

政策的分野における定義

国語行政における定義
  • 筆画の組合せから成る,1字としてのまとまった形

活字字体整理に関する協議会第1回総会 5.懇談(1)術語について』国語審議会 文化庁 1947/07/23

  • まず「字体」については,活字字体の整理に関する協議会ではこれに「点画の組合せからなる1字1字の形である」という定義をあたえてこれを書体と区別しておりますが,これはだいたいうけいれてよい考え方であると思われますが,あるいはまた点画の組合せの定型化されたものともいえましょう。 歴史的に漢字の変遷・発達をたどってみると,なお別個の見解もでてまいりますが,漢字を現段階のものについて考えるときには,字体を点画の組合せに即したものとみることが,合理的であります。

第14回国語審議会総会における安藤主査委員長の報告―字体整理案について―』「第14回国語審議会総会 3.字体整理に関する主査委員会の審議経過報告ならびに原案の説明」 国語審議会 文化庁 1948/06/01

  • 文字の骨組み

常用漢字表 表の見方及び使い方 四』昭和56年内閣告示第一号 1981/10/01

  • 字体については、常用漢字表に示されている「字体は文字の骨組みである」という考え方を踏襲する。文字の骨組みとは、ある文字をある文字たらしめている点画の抽象的な構成の在り方のことで、他の文字との弁別にかかわるものである。 字体は抽象的な概念であるから、これを可視的に示そうとすれば、一定のスタイルを持つ具体的な文字として出現させる必要がある。

表外漢字字体表 一.前 文 3 字体・書体・字形にかかわる問題とその基本的な考え方(1)字体・書体・字形について』国語審議会 文化庁 2000/12/08 答申


以上は、国語施策情報システムにて閲覧可能。

工業規格における定義
  • 図形文字の図形表現としての形状についての抽象的概念。

JISX0208 7ビット及び8ビットの2バイト情報交換用符号化漢字集合 4. 定義 i )字体(ZITAI)日本工業規格 制定年月日:1978/01/01 最新改正年月日:1997/01/20 最新確認年月日:2002/07/20
JISX0213 7ビット及び8ビットの2バイト情報交換用符号化拡張漢字集合 4. 定義 i )字体(ZITAI)日本工業規格  制定年月日:2000/01/20 最新改正年月日:2004/02/20

  • 概念を点画などの要素を組み合わせて文字化するという処理を経て出現した文字の骨格表現。

JISX0212 情報交換用漢字符号−補助漢字 2. 用語の定義 (6)字体日本工業規格 制定年月日:1990/10/01 最新確認年月日:2002/07/20

  • 一群の字に対して統一的に定められた字形(個々の字の形状)の一組。

『JISX9001 光学式文字認識のための字形(英数字) 2. 用語の意味 (3)字体日本工業規格 制定年月日:1970/06/01 最新改正年月日:1976/11/01 最新確認年月日:2004/11/20
JISX9003 光学式文字認識のための字形(片仮名) 2. 用語の意味 (3)字体日本工業規格 制定年月日:1973/08/01 最新改正年月日:1980/02/01 最新確認年月日:2004/11/20

  • 一群の片仮名に対し規範として定められた字形の一組。

JISX9005 光学式文字認識のための手書き文字(片仮名) 2. 用語の意味 (3)字体日本工業規格 制定年月日:1979/11/01 最新改正年月日: 最新確認年月日:2004/11/20

  • 一群の数字に対し、規範として定められた字形の一組。

JISX9006 光学式文字認識のための手書き文字(数字) 2. 用語の意味 (3)字体日本工業規格 制定年月日:1979/11/01 最新改正年月日: 最新確認年月日:2004/11/20

  • 一群の英字に対し規範として定められた字形の一組。

JISX9007 光学式文字認識のための手書き文字(英字) 2. 用語の意味 (3)字体日本工業規格 制定年月日:1981/07/01 最新改正年月日: 最新確認年月日:2002/07/20

  • 一群の記号に対し規範として定められた字形(個々の記号)の一組。

JISX9008 光学式文字認識のための手書き文字(記号) 2. 用語の意味 (4)字体日本工業規格 制定年月日:1981/07/01 最新改正年月日: 最新確認年月日:2002/07/20

  • 表現された字形の基礎にある文字概念で、個々の文字を識別する要素としての点画、筆角の組合せ方をいう。すなわち、字体は抽象的なものであり、具体的には字形として表現する。

JISX9009 光学式文字認識のための手書き文字(平仮名) 2. 用語の意味 (3)字体日本工業規格 制定年月日:1985/07/01 最新改正年月日:1991/08/01 最新確認年月日:2002/07/20

  • 一つの漢字として認識される点画の抽象的な構成の在り方で、視覚的認識のために他の文字と明確に区別できる特徴を備えている。
    • 参考:漢字符号の幾つかの規格では字体を抽象的な概念と位置付け、その具体的な形として実現されたものを字形と定義している。JIS X 0208及びJIS X 0213では包摂基準を設け、その基準の範囲内においては複数の字体を区別せずに、それらに同一の区点位置を与えている。“常用漢字表”及び“表外漢字字体表”では、各々においてデザインの違いであって字体の違いはないと考えられる字形差が例示されている。また、義及び音が同じ漢字でありながら、標準的な字体と異なる字体のものを異体字という。

JISZ8125 印刷用語−デジタル印刷 5. 用語及び定義 00.基本(一般) 00.01.01 字体日本工業規格 制定年月日:2004/02/20

  • 漢字の骨格であって,視覚的認識のために他と明確に区別できる特徴を備えている。
    • 参考:漢字符号の幾つかの規格では字体を抽象的な概念と位置付け,その具体的な形として実現されたものを字形と定義している。字体差の大小によって,差の少ないものは同値とみなし,差の大きいものを独立としている。 文字の可視化表現から大きさ及び意匠デザインを正規化した抽象化表現を字体ということもある。(解説4.3参照)

TR X 0003:2000  フォント情報処理用語

  • 文字の抽象的な形 (骨格) の概念で、文字の骨組みなどともいわれ、具体的に視覚化することは不可能である。(ISO/IEC TR15285、国語審議会資料などから。)本委員会では、漢字部首も符号化文字に含まれる、という立場から、部首にも“字体 (glyph)”が存在すると考える。

文字コード標準体系専門委員会報告書 付録3 用語 付3.2 本委員会として定義を試みる用語、及びその定義情報処理学会 情報規格調査会 2002年3月(PDF)


以上は、日本工業標準調査会:データベース検索-JIS検索にてPDF(文書が画像化されたもの)の検索・閲覧が可能。



以上から共通項として、「字体」の定義に関して重要な語彙が見いだされるのは前回にほぼ等しく、「字体」とは『抽象的な概念/観念』である、ということと、以下の3つのグループへの分類である。

  1. 骨組み・骨格
  2. 弁別指標
  3. 社会共通の基準


また、今回新たなグループとして、

  • 点画の組み合わせ

が見出される。